2017年09月16日

「多角多面」を転載します

週刊金曜日発行人 北村肇さんのコラムに音訳版のことが載りました、以下に全文掲載致します。
矢部信博

〈北村肇の「多角多面」333〉
◆音訳版に感謝しつつ◆

 文章を書くときに気をつけているのはリズムだ。流れといってもいい。音楽と同じで、リズムが崩れると心地よさがなくなる。だれに教わったか忘れたが「音読をしてみるといい」といわれ、時折、やってみる。なるほど、目で追っているときには気付かなかった欠陥にはっとすることがある。

 このコラムは有料メルマガ向けに書いているのだが、実はもう一つ別の媒体にも提供している。本誌の音訳版だ。文字が見えない、あるいは見えにくい方々を主な対象に、「テープ版読者会」がボランティアで作成している。十数年前、現代表の舛田妙子さんが弊社を訪れ、「情報格差は問題だ。『金曜日』は読むだけではなく『聞く』雑誌にしてほしい」と力説された。後日、笑い話として「まるで押しつけ販売だ」とちゃかしたりしたが、説得力があったし、何より舛田さんの熱意と迫力に感じ入った。

 事務所を借り、ボランティアの音訳スタッフを集め、週に2日はほとんど徹夜というハードな作業。途中から矢部信博さんという力強い相棒を得たが、まさに激務。二人の努力には頭が下がった。こちらもがんばらなくてはと、読みやすくリズムの崩れない文章つくりに腐心した。いや、勉強させていただいたというほうが的確だろう。

 その音訳版が今月限りで休止となる。舛田さんの体調が思わしくなく、継続が困難になってしまった。残念至極だが、いまは感謝の言葉を贈るしかない。

 リズムとともに、私が文章で注意を払うのは「よって立つところ」だ。言い換えれば、「だれのために、何のために書くのか」である。報道機関に携わって40年以上、いつも自分に言い聞かせてきた。「強い者と弱い者がいたら、まずは弱い者の立場に身を置く」と。「何のために」の答えは「平和で差別のない社会にする」であり、それには「弱い者の立場に身を置く」ことが欠かせない。

 人はだれでも強者であり弱者だ。自分の強いところは弱い人のために役立てる。逆に弱いところは強い人の力を借りる。これがうまくまわれば、社会から差別は消えていくと信じる。だが、いまのこの国をみると、統治権力者や大企業といった強者が、弱者を踏みにじり続けている。彼ら/彼女らは、権威を振りかざすのは自らの魂が弱い証拠だということに気づいていない。真のやさしさがわかっていないのだ。そんななかで、やさしさを具現化していた媒体がなくなるのはさびしい。でも、一粒の麦は地に落ちてまた新しい命を生み出す。理想が消えることはない。だから、人間はすばらしい。 (2017/9/15)
posted by tapeban at 19:24| Comment(0) | 日記